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Beauty Source キレイの魔法

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恋愛セミナー32【梅枝】

第三十二帖  <梅枝 うめがえ>  あらすじ

明石の姫がいよいよ裳着を向かえることになりました。
東宮も同じ時期に元服するので、その後すぐに入内することになりそうです。

源氏は入内の準備として、古今の錦、綾を集め、調度類を調えます。
唐から香木が届いたので、六条院や縁の女性たちに二種類ずつお香を調合してもらうことにしました。
紫の上も源氏も、お互いの部屋に引きこもって秘伝の方法で調合しています。

それぞれの香がそろう頃、六条院に兵部卿宮が訪ねてきたので源氏は判定を願います。
朝顔の君は沈香(じんこう 黒色なら伽羅)の箱に瑠璃の香壷。「黒坊(くろぼう 冬の香)」が優美な香り。
源氏は庭に埋めて熟成させた香。「侍従(じじゅう 秋の香)」がことに匂い立っています。
紫の上は式部卿宮から伝えられた三種類の調合法。中でも「梅香(ばいか 春の香)」がとても斬新。
花散里は控えめにただ一種類を届けますが、その「荷葉(かよう 夏の香)」はやさしくしっとりとしています。
明石の君は「薫衣の香 (くのえのこう)」。気品高くめったにないほど素晴らしい仕上がりになりました。
兵部卿宮は皆を褒めたので、源氏は「気の多い判者ですね。」と笑います。

秋の町で明石の君の裳着が行なわれ、紫の上は初めて秋好中宮に会います。
源氏は明石の君のことを考えましたが、世間にどのような関係なのかと思われることを考慮して、
呼ぶことは控えました。

入内の前に、源氏は様ざまな書の手本も集めています。
兵部卿宮、夕霧、そして源氏自身も技巧を凝らして古歌などを書きました。
源氏は紫の上に、仮名の上手は朧月夜、朝顔の君、そして紫の上だと言って褒めます。

こうして明石の姫の入内の準備が着々とすすんでいるのをきくと、内大臣は雲居の雁と比べて味気なく思い、
夕霧につらく当たったことを後悔し始めていました。
内大臣の気持ちの変化を夕霧は噂で聞いていましたが、向こうが折れてくれるまでは辛抱つよく待つつもりです。
源氏はなかなか結婚しない夕霧に他の姫との縁談をすすめたり、
浮気をせず夫婦仲良く添い遂げることが肝心、などと忠告したり。
もちろん真面目な夕霧は雲居の雁以外に心を移すことなど考えられません。

内大臣は女房から「夕霧が他の姫と結婚するらしい。」と聞き、雲居の雁のところにやってきました。
「源氏の君がそれとなく頼まれていたのを断ったのに、今さら折れるのは世間の笑い者になるだろうし。
でもやはり向こうの気持ちを聞いてみた方がいいだろうか。」
内大臣は悩みながら帰ってゆきます。

情けなさに雲居の雁が涙ぐんでいる時、夕霧から歌が届きました。
「ずっと一人の人を思っている私は変わっているのだろうか。」
「私を忘れて世間の風になびいてしまうあなたは平凡な人よ。」と返す雲居の雁。
夕霧は雲居の雁が何故怒っているのか理解できないのでした。

1 夕霧と雲居の雁  幼なじみの恋は何処へ

源氏の子ども達が大人になってゆきます。
明石の姫11歳、夕霧は18歳、そして源氏は39歳になりました。

六条院ができてから4年。
秋好中宮と紫の上が初めて対面したということに驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。
季節の便りをかわしつつも、住んでいる女性達が互いに顔をあわせる機会はないのです。

まして、中宮は王族の一員。六条院での催しさえ格式から参加しないことの方が多い。
明石の姫が中宮の秋の町で裳着を行なったのは、破格の待遇で前例がないことです。
それだけ明石の姫の地位を高めようとする源氏の思いが強く、実母である明石の君を呼ばなかったのも、
彼女の低い身分が明石の君に差しさわりがないようにするためなのです。

明石の姫の結婚の準備についてどう思われるでしょう。
男性にとってはおそらく退屈、女性にとってはワクワクすることが多いのではないでしょうか。
贅を尽くした衣服や家具、貴族のたしなみである絵画や書。
そして季節に合わせて用意された香を判定するシーンは、現代にも伝えられる優雅な香道を思わせますね。
香の調合法は決まっていても、作った人の心の深さや心配りで微妙に変化するのを、
兵部卿宮は敏感にかぎ分けています。
ここに出てくる香は現代でも手に入るものもありますので、見かけた時にお手にとってみてはいかがでしょうか。
香りからも登場人物の人柄がわかるかもしれません。

さて、内大臣が明石の姫の入内を聞いて心弱りしていますね。
後先を考えず夕霧を拒んだが、、雲居の雁の行く先はどこにもない。
肝心の夕霧本人は知らん顔に見える。

この物語の中には「極端に強引にことを運ばないようにして波風をたてないように。」という言葉がよく出てきます。
源氏の子どもに対する教育方針でもあり、明石の姫には万遍ない教養をもち鷹揚に物事に対するようにしていました。
紫の上も源氏が教育しましたが、書や琴や歌といった教養から染物などの家事一般までオールマイティにこなす女性です。

内大臣の方も教養はあるのですが、どちらかというと「一芸に秀でた」子どもが多い。
柏木は笛や琴、その弟は歌が大変上手、内大臣自身も和琴の名手で、
蹴鞠(けまり)は源氏もかなわなかったと記されている。
世の声望を集める源氏の長年のライバルとして対した内大臣は負けん気が強いせいなのか、
どうも強引にことを運ぶきらいがあるようです。

一方、源氏の夕霧に対して親としての忠告も、これまで数々の色恋沙汰をみてきた方には笑止な感じです。
故・桐壺院も源氏には女性をぞんざいに扱わないようにさとしていましたが、
実際には波風を立てていたので源氏は真面目に聞いていませんでした。
自分が踏んだ轍を子どもに踏ませないようにと思うのが親心。
親と同じようなことを繰り返しがちなのが子ども。

真面目な夕霧も源氏と同じ道を歩むのでしょうか?


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